2024年1月、新NISAがスタートした。「投資を始めるなら今だ」と背中を押され、証券口座を開設した人も多いだろう。あれから2年が経った。

結果はどうだろうか。順調に資産が増えている人もいれば、2025年の相場変動で含み損を抱えて不安になっている人もいるはずだ。あるいは、積立設定をしたまま一度もログインしていない人もいるかもしれない。

本記事では、新NISAの2年目に見えてきたリアルな課題を整理し、3年目に向けて何をすべきかを考える。

この記事でわかること
・新NISA 2年間の相場環境の振り返り
・2年目に陥りやすい失敗パターン
・銘柄選び・枠の使い方の見直しポイント
・これから始める人が持つ「後発の優位性」

新NISA 2年目——何が変わったか

株価チャートを表示するモニター

2024年の相場環境の振り返り

新NISAの初年度となった2024年は、投資家にとって追い風の年だった。日経平均株価は年初の33,000円台から上昇を続け、3月には史上初めて40,000円を突破。バブル期の最高値を34年ぶりに更新するという歴史的な瞬間を迎えた。

米国市場も好調だった。S&P500は年間を通じて約24%上昇し、AI関連銘柄を中心にハイテク株が牽引した。全世界株式インデックスも堅調で、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の基準価額は年間で約30%上昇している。

つまり、2024年に積立を始めた人の大半は、年末時点で含み益を抱えていた。「NISAを始めてよかった」と実感できた1年だったはずだ。しかし、この成功体験がかえって油断を生むことになる。

注意すべきは、2024年のリターンが「普通」ではないという点である。過去30年の全世界株式の年平均リターンは約7〜8%だ。30%という数字は明らかに出来すぎであり、この水準が毎年続くと期待すべきではない。

2025年の相場変動と円高・円安の影響

2025年に入ると、景色は一変した。年初こそ堅調だったものの、米国の関税政策の不透明感やインフレ再燃の懸念から、株式市場は大きく調整する場面が複数あった。日経平均は一時35,000円を割り込み、S&P500も年初来で10%以上の下落を記録した局面がある。

さらに、為替の変動が日本の投資家を直撃した。2024年は1ドル=150円前後の円安が続き、外国株投資には為替差益がプラスに働いていた。しかし2025年に入ると日銀の追加利上げ観測から円高方向に振れる場面が増え、1ドル=140円台前半まで円高が進んだ時期もあった。

円高は、外国株式に投資している人にとってダブルパンチだ。株価が下がっているうえに、円換算するとさらに目減りする。eMAXIS Slim全世界株式を保有している場合、株価の下落が5%でも、円高の影響で評価額は10%近く減っているように見えることがある。

この「見かけ上の損失の拡大」が、2年目の投資家を精神的に追い詰めている。2024年の含み益が一気に縮小、あるいはマイナスに転じたことで、「やっぱり投資は怖い」という感情が芽生えてしまうのだ。

2年目に見えてきた課題と失敗パターン

データを分析するビジネスパーソン

積立設定を放置している人のリスク

「積立投資は放置でいい」——この言葉は半分正しく、半分間違っている。確かに、毎月の積立を淡々と続けること自体は正しい戦略だ。しかし「放置」と「管理しない」は別物である。

例えば、2024年に証券口座を開設したとき、とりあえず人気ランキング上位のファンドを選んだ人は多いだろう。その中には、同じインデックスに連動する複数のファンドを重複して購入している人がいる。eMAXIS Slim全世界株式とSBI・V・全世界株式を両方積み立てている、といったケースだ。どちらもMSCI ACWIに連動するファンドなので、分散にはなっていない。ただの二重買いである。

また、積立金額の見直しも重要だ。2024年に「とりあえず月1万円」で始めた人が、収入が増えたにもかかわらず1万円のまま放置していると、年間の非課税枠(つみたて投資枠120万円)を大幅に余らせることになる。非課税枠は翌年に繰り越せないため、使わなければそのまま消える。

放置が許されるのは、適切な銘柄選択と適切な金額設定がすでにできている場合だけだ。最低でも半年に一度は、ポートフォリオと積立金額を確認する習慣をつけるべきである。

成長投資枠の使い方に迷う問題

新NISAには「つみたて投資枠」(年間120万円)と「成長投資枠」(年間240万円)の2つがある。つみたて投資枠はインデックスファンドの積立に使っている人が多いが、問題は成長投資枠だ。

成長投資枠では個別株やアクティブファンドも購入できるため、「せっかくだから個別株にも挑戦してみよう」と考える人が少なくない。しかし、投資経験2年未満の初心者が個別株で安定したリターンを出すのは極めて難しい。企業の財務諸表を読み、業界動向を分析し、適切なタイミングで売買する——これらのスキルは一朝一夕に身につくものではない。

実際、2024年に「AIブームに乗ろう」と半導体関連の個別株を成長投資枠で購入した人の中には、2025年の調整局面で大きな含み損を抱えている人もいる。個別株は値動きがインデックスより激しいため、精神的な負担も大きい。

成長投資枠の最もシンプルかつ合理的な使い方は、つみたて投資枠と同じインデックスファンドを追加購入することだ。「成長投資枠だから成長株を買わないといけない」というルールはどこにもない。枠の名前に惑わされず、自分の投資方針に合った使い方をすればいい。

Point:成長投資枠=個別株枠ではない
成長投資枠でもインデックスファンドは購入できる。投資初心者がわざわざ個別株に手を出すメリットは薄い。まずはインデックスファンドで枠を埋め、個別株に挑戦するのは投資の知識と経験が十分に身についてからでも遅くない。

含み損で積立を止めてしまうケース

2年目の最大の落とし穴がこれだ。2024年に順調に増えていた評価額が、2025年の調整で減少に転じたとき、「これ以上損を増やしたくない」と積立を停止してしまう人がいる。

気持ちはわかる。毎月3万円を積み立てているのに、評価額がどんどん減っていくのを見るのは辛い。「今止めておけば、これ以上の損失は防げる」と考えるのは自然な心理だ。

しかし、これは積立投資において最もやってはいけない行動の一つである。積立投資の強みは「ドルコスト平均法」——株価が高いときには少なく、安いときには多く買うことで、平均購入価格を平準化する仕組みだ。株価が下がっているときこそ、同じ金額でより多くの口数を購入できるため、将来の回復時に大きなリターンにつながる。

過去のデータを見ても、S&P500は数々の暴落を経験してきたが、長期的には一貫して右肩上がりだ。リーマンショック(2008年)で50%以上下落したが、約5年で回復。コロナショック(2020年)の暴落からは半年で回復した。重要なのは「市場に居続けること」であり、下落局面で退場することは長期リターンを大きく毀損する。

含み損が辛いのは、そもそも投資額が「自分のリスク許容度」を超えている可能性がある。毎月の積立額を減らすことは選択肢の一つだが、完全に止めるのは避けるべきだ。月3万円が辛ければ1万円に減額する。それでも辛ければ5,000円にする。ゼロにしないことが最も重要である。

2年目以降に見直すべきポイント

ノートパソコンで投資情報を確認する人

銘柄の分散状況を確認する

2年目のタイミングで、自分のポートフォリオの中身を改めて確認してほしい。チェックすべきポイントは3つある。

1つ目は「重複がないか」だ。前述の通り、同じインデックスに連動するファンドを複数保有していないか確認する。eMAXIS Slim全世界株式を持っているなら、S&P500連動ファンドを追加する意味は薄い。全世界株式の約60%は米国株であり、S&P500と大部分が重複しているからだ。

2つ目は「地域の偏り」である。全世界株式インデックス1本で投資している場合、実質的に米国株が60%以上を占めている。これ自体は時価総額加重平均の結果なので「間違い」ではないが、米国経済への依存度が高いことは理解しておく必要がある。もし米国以外の地域にも分散したいなら、新興国株式インデックスや日本株インデックスを少額追加する選択肢もある。

3つ目は「資産クラスの分散」だ。株式100%のポートフォリオは、上昇局面では効率的だが、下落局面での振れ幅も大きい。年齢やリスク許容度によっては、債券ファンドを一定割合組み入れることで、ポートフォリオ全体のボラティリティを下げられる。一般的には「100 − 年齢 = 株式の比率(%)」が目安とされるが、これはあくまで参考値だ。

確認したうえで問題がなければ、そのまま継続すればいい。大事なのは「知らないまま放置する」のではなく、「理解したうえで継続する」ことだ。

年間投資枠の使い切り戦略

新NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円の合計360万円だ。生涯投資枠は1,800万円で、これを5年で使い切ることも、20年かけて使うことも自由である。

ここで問題になるのが「枠を使い切るべきか」という判断だ。結論から言えば、余裕資金の範囲で、できるだけ早く枠を埋めるのが合理的である。理由は単純で、投資期間が長いほど複利効果が大きくなるからだ。

ただし「枠を使い切るために生活費を切り詰める」のは本末転倒である。投資に回すのは、生活防衛資金(生活費の6ヶ月〜1年分)を確保したうえでの余裕資金に限るべきだ。

具体的な使い切り戦略としては、つみたて投資枠は月10万円の積立で年間120万円。成長投資枠は、毎月20万円の積立で年間240万円。合計月30万円を積み立てれば、5年で1,800万円の生涯投資枠を埋められる計算だ。月30万円が難しければ、まずはつみたて投資枠の月10万円を目指す。それも難しければ、無理のない金額から始めて、収入が増えるたびに積立額を引き上げていく。

枠の使い切りにこだわりすぎて投資がストレスになるようでは意味がない。自分のペースで、着実に枠を活用していくのが正解だ。

出口戦略

新NISAは「非課税期間が無期限」という画期的な制度だ。旧NISAのように20年で非課税期間が終了する心配はない。しかし「いつまでも売らなくていい」わけではない。いつか必ず「取り崩す」タイミングが来る。

出口戦略を考えるうえで重要なのは、「何のために投資しているか」を明確にすることだ。老後資金なのか、住宅購入の頭金なのか、子どもの教育費なのか。目的によって、取り崩しのタイミングと方法は異なる。

老後資金が目的なら、定年後に「定率取り崩し」を行うのが一般的だ。毎年、資産の4%を取り崩す「4%ルール」は、米国のトリニティ大学の研究に基づくもので、過去のデータでは30年以上資産を維持できる確率が高いとされている。ただし、これは米国市場のデータに基づいており、日本の状況にそのまま当てはまるかは議論がある。

住宅購入や教育費など、使う時期が比較的はっきりしている場合は、目標時期の3〜5年前から段階的に株式を売却し、預金や短期債券に移していくのが安全だ。株式のまま持ち続けて、いざ使うタイミングで暴落していたら目も当てられない。

出口戦略は「始めるとき」に考えるのが理想だが、2年目の今からでも遅くはない。漠然と積み立てるのではなく、ゴールから逆算して投資計画を組み立てる。この意識があるかないかで、10年後・20年後の結果は大きく変わる。

Point:新NISAの売却枠は翌年に復活する
新NISAでは、保有資産を売却した場合、その「取得価額分」の非課税枠が翌年に復活する。つまり、一度使い切った1,800万円の枠も、売却すれば再利用できる。ライフイベントに合わせて柔軟に取り崩しと再投資ができる設計になっている。

これから始める人の後発の優位性

成長する植物と光

低コストインデックスファンドの選択肢が増えた

「出遅れた」と焦る必要はない。むしろ、2026年から始める人にはいくつかの優位性がある。その筆頭が、投資環境の充実だ。

新NISAのスタートをきっかけに、各運用会社は競い合うように低コストインデックスファンドを投入してきた。信託報酬(運用手数料)の引き下げ競争は激化し、2024年の時点ですでに年0.1%を切るファンドが複数あったが、2025年にはさらに低コスト化が進んだ。

例えば、全世界株式インデックスファンドの信託報酬は、2023年時点で年0.1133%(eMAXIS Slim)だったものが、2025年には年0.05%台のファンドも登場している。信託報酬の差はわずかに見えるが、長期投資では大きな差になる。仮に1,000万円を30年間運用した場合、年0.1%の差は約30万円の差を生む。

また、ポイント投資やクレジットカード積立のポイント還元も充実している。楽天証券の楽天カード積立、SBI証券の三井住友カード積立など、積立額に対して0.5〜1%のポイントが付与される。月10万円の積立で年間6,000〜12,000円分のポイントが戻ってくる計算だ。これは実質的なリターンの上乗せである。

2024年スタート組が「とりあえず人気ファンドを選んだ」のに対し、今から始める人は2年分の情報と比較データをもとに、より合理的な選択ができる。焦って始めるよりも、正しい知識を持って始める方がよほど重要だ。

先人の失敗事例から学ぶ

2年間で蓄積された「失敗事例」は、これから始める人にとって最良の教材だ。SNSやブログ、YouTubeには、実体験に基づいた反省記事や動画があふれている。

代表的な失敗パターンは本記事で述べた通りだが、改めて整理すると以下の通りである。含み益が出ている時期に調子に乗って個別株に手を出す。相場が下がったときにパニックになって売却する。SNSの「おすすめ銘柄」を鵜呑みにして購入する。信託報酬の高いアクティブファンドを選んでしまう。これらの失敗を事前に知っているだけで、同じ轍を踏む確率は大幅に下がる。

もう一つの優位性は、「高値掴み」のリスクが相対的に低いことだ。2024年初に一括投資した人は、日経平均33,000円台、S&P500が4,700ポイント台で購入している。2025年の調整を経た2026年の水準から始める場合、2024年の高値で購入した人よりも有利なエントリーポイントになっている可能性がある(もちろん、ここからさらに下がる可能性もあるが)。

「ベストなタイミング」を見極めることは、プロの投資家にも不可能だ。しかし、先人の経験から学び、適切な銘柄を選び、無理のない金額で始める——これだけで、投資の成功確率は大きく上がる。「遅すぎる」ということはない。始めないことこそが、最大のリスクだ。

まとめ

新NISAの2年目は、1年目の好調さとは打って変わって、投資の「現実」と向き合う時期になっている。しかし、この経験こそが長期投資家として成長するための重要なステップだ。

最後に、タイプ別の「次の一手」を整理する。

タイプ現状次にやるべきこと
放置タイプ積立設定後ログインしていないポートフォリオを確認し、銘柄の重複と積立額を見直す
不安タイプ含み損で積立を止めようか迷っている積立額を減らしてもいいので、絶対に止めない。市場に居続けることが最優先
欲張りタイプ成長投資枠で個別株に挑戦して苦戦中個別株の比率を下げ、インデックスファンド中心に切り替える
堅実タイプインデックス積立を淡々と継続中積立額の増額と出口戦略の検討を始める
未スタートまだNISA口座を開設していない低コストの全世界株式インデックスファンドで、月1万円から始める

株式市場は短期的には上がったり下がったりを繰り返す。しかし、長期的には世界経済の成長とともに右肩上がりの傾向を示してきた。新NISAは、この長期的な成長の果実を非課税で受け取れる制度だ。

2年目の含み損に一喜一憂する必要はない。大切なのは、正しい知識を持ち、自分のリスク許容度を理解し、市場に居続けることだ。10年後に振り返ったとき、「あのとき止めなくてよかった」と思える判断を、今日してほしい。