2026年4月は法改正の「当たり年」だ。給与明細に新しい天引き項目が加わり、自転車の交通違反に反則金が科され、離婚後の親権の仕組みが約77年ぶりに変わる。いずれも「知らなかった」では済まされない変更ばかりだ。本記事では、2026年4月前後に施行される主要な制度変更を「お金」「交通」「家族」「働き方」の4分野に分けて解説する。

この記事でわかること
  • 給与天引きが変わる:子育て支援金の新設と雇用保険料の引き下げ
  • 自転車に反則金:青切符制度の対象違反と金額
  • 共同親権の導入:離婚後の親権はどう変わるのか
  • シニアに朗報:在職老齢年金の支給停止基準が大幅緩和
  • パート労働者の年収の壁が変わる:扶養認定ルールの改正

お金に関する変更:手取りはどうなる?

電卓と紙幣が置かれたデスク

子ども・子育て支援金が給与から天引きされる

2026年4月、改正子ども・子育て支援法に基づき、「子ども・子育て支援金」の徴収が始まる。医療保険料に上乗せする形で給与から天引きされ、多くの人は2026年5月支給分の給与から影響を受ける。2026年度の支援金率は0.23%で、全制度平均の1人あたり負担額は月額約250円だ。

この支援金は2027年度に約350円、2028年度に約450円と段階的に引き上げられる予定だ。事業主と折半のため、実際の給与天引き額は上記の半額程度となる場合もあるが、加入する医療保険の種類によって異なる。

集められた支援金の使途は、児童手当の拡充(所得制限の撤廃、高校生までの延長、第3子以降月3万円への増額)、こども誰でも通園制度、出生後休業支援給付、育児時短就業給付など6事業だ。子育て世帯にとっては、徴収される額以上の恩恵が受けられる設計になっている。

ただし、子どもがいない世帯や独身者にとっては純粋な負担増となる。「全世代で子育てを支える」という理念は理解できるが、手取りが減ることに変わりはない。給与明細の新しい項目には注意しておきたい。

在職老齢年金の支給停止基準が月65万円に緩和

年金制度改正法により、在職老齢年金の支給停止調整額が月51万円から月65万円に引き上げられる。これにより、賃金と年金の合計が月65万円以下であれば、年金が減額されることなく全額受給できるようになる。

具体例を挙げると、賃金月40万円+年金月16万円=合計56万円の場合、改正前は月2.5万円の年金が停止されていたが、改正後は全額支給される。年間で約30万円の差だ。この改正により、新たに約20万人が老齢厚生年金を全額受給可能になると推計されている。

背景にあるのは、深刻な人手不足だ。「働くと年金が減る」という仕組みが高齢者の就労意欲を削いでいるとの指摘を受け、就労と年金の両立を促す狙いがある。65歳以上の経験豊富な人材が「年金が減るから」と仕事を辞めるのは、本人にとっても社会にとっても損失だ。

シニア世代にとっては明確な朗報である。ただし、年金額が増えることで所得税・住民税・社会保険料の負担が増える可能性もあるため、手取り全体への影響は個別に確認する必要がある。

パート労働者の「130万円の壁」が変わる

社会保険の扶養認定ルールが大きく変わる。改正前は、過去の実績や今後の見込みから年間収入が130万円以上と判断されると扶養から外れていたが、改正後は「労働条件通知書に記載された基本的な賃金」をベースに判定される。

最大のポイントは、残業代や繁忙期の一時的な収入増で130万円を超えても、契約上の基本給が130万円未満であれば扶養から外れないという点だ。これまで多くのパート労働者が年末に就業調整をしていた「130万円の壁」問題が、大幅に緩和される。

ただし注意点もある。通勤手当(交通費)は引き続き収入に含まれる。また、契約上の年収が130万円以上の場合は、実際の収入が130万円未満でも扶養認定されない可能性がある。判定基準が「実績ベース」から「契約ベース」に変わるということは、労働条件通知書の記載内容がこれまで以上に重要になるということだ。

パート労働者は、自分の労働条件通知書の内容を確認し、必要に応じて雇用主と契約内容の見直しを相談することをお勧めする。

雇用保険料が引き下げ、年金額は4年連続増

2026年4月から、失業等給付分の雇用保険料率が0.7%から0.6%に引き下げられる。一般事業の労働者負担は1000分の5.5から1000分の5に。わずかだが手取りが増加する。ただし、前述の子育て支援金の新設分で相殺される可能性が高い。

年金額は4年連続の増額だ。国民年金(老齢基礎年金)の満額は月7万608円、厚生年金のモデル世帯(夫婦2人分)は月23万7,279円。改定率は国民年金+1.9%、厚生年金+2.0%だが、2025年の物価上昇率3.2%を下回っているため、実質的には年金の購買力は目減りしている。

企業型確定拠出年金(DC)のマッチング拠出では、「従業員の拠出額は会社の拠出額以下」という制限が撤廃される。月額5.5万円の上限内であれば、会社の拠出額に関係なく自由に積み増せるようになった。老後資金の積立を増やしたい人にとっては見逃せない改正だ。

お金に関する2026年4月の変更は、プラスとマイナスが混在している。給与明細を毎月チェックし、自分の手取りがどう変わったかを把握する習慣をつけたい。


交通ルールの変更:自転車と車に要注意

都市の交差点を行き交う自転車と歩行者

自転車に「青切符」:スマホながら運転は12,000円

改正道路交通法により、2026年4月1日から自転車の交通違反に「青切符(交通反則通告制度)」が導入される。対象は16歳以上の自転車運転者だ。これまで自転車の違反は刑事手続き(赤切符)の対象だったため、軽微な違反は事実上取り締まりが難しかった。青切符の導入により、反則金を納付すれば前科がつかない仕組みとなり、取り締まりが大幅に強化される。

主な反則金額は以下のとおりだ。

違反内容反則金
スマホながら運転12,000円
信号無視6,000円
一時不停止6,000円
右側通行6,000円
傘差し運転5,000円
無灯火5,000円

特に注意すべきはスマホながら運転だ。自転車に乗りながらスマートフォンを操作する行為は12,000円の反則金。通勤・通学中にマップアプリを確認したり、音楽の選曲をしたりする行為も対象になりうる。自転車に乗る前にナビを設定し、走行中は画面を見ない習慣をつけたい。

この制度は歩行者の安全を守るためのものだ。自転車による死亡事故の約7割は自転車側のルール違反が原因とされている。「ちょっとくらい」の違反が重大事故につながることを、反則金という形で可視化する意義は大きい。

車が自転車を追い越す際のルールが明文化

同じく2026年4月から、自動車が自転車や電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の横を通過する際のルールが初めて法律で明文化される。十分な間隔(推奨1.5m以上)を空けるか、間隔が確保できない場合は徐行する義務が課される。

違反した場合の罰則は、3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金。反則金は普通車で7,000円、違反点数は2点だ。注目すべきは、自転車側にも新たな義務が課された点だ。追い越される際に左に寄らないと「被側方通過車義務違反」で反則金5,000円が科される。

この法改正の背景には、自転車と自動車の接触事故の増加がある。幅の狭い道路で車が自転車を追い越す際、十分な距離を取らずにすれすれを通過するケースが問題視されていた。法的な基準が明確になったことで、ドライバーにも自転車利用者にも新たな注意が求められる。

なお、生活道路(中央線のない道路)の法定速度が60km/hから30km/hに引き下げられる改正は、2026年9月1日施行だ。4月ではないが、同年内に施行される重要な交通ルール変更として覚えておきたい。

50cc原付が「125cc以下・4kW以下」に再定義

2026年4月1日から、原付一種の定義が「排気量50cc以下」から「排気量125cc以下で最高出力4kW以下」に変更される。これは排ガス規制の強化により、50ccエンジンの新車開発・生産が事実上不可能になったことへの対応だ。

原付免許で乗れるバイクの排気量は実質的に拡大するが、法定速度30km/h、二段階右折、2人乗り禁止といった原付のルールは変更されない。すでに登録済みの50ccバイクもそのまま原付一種として使用可能だ。

バイクメーカーにとっては、50ccモデルを125ccベースの出力制限モデルに置き換えることで、排ガス規制をクリアしつつ原付市場を維持できるメリットがある。利用者にとっては、50ccよりもパワフルで安定感のあるバイクを原付免許で乗れるようになる。

また、仮免許の取得年齢が18歳から17歳6ヶ月に引き下げられる点も見逃せない。早生まれの学生が高校在学中に教習所に通いやすくなる改正だ。ただし、本免許の交付は従来どおり18歳以降となる。

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家族に関する変更:共同親権と通園制度

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約77年ぶりの大改正:離婚後の共同親権が可能に

改正民法の施行により、2026年4月1日から離婚後の共同親権が選択可能になった。これは1947年の民法改正以来、約77年ぶりの親権制度の大改正だ。従来は離婚時に必ず父母のどちらかを親権者に定める「単独親権」一択だったが、改正後は「共同親権」と「単独親権」を選べるようになった。

共同親権を選択した場合、離婚後も両親が子どもの教育、医療、居所変更などの重要事項を共同で決定する。日常的な行為(食事、衣服、軽微な医療など)は、子どもと同居する親が単独で決められる。話し合いで親権の形を決められない場合は、家庭裁判所が「子の利益」を最優先に判断する。

DV(家庭内暴力)や虐待がある場合は、裁判所が単独親権を命じることが法律で明記されている。「共同親権によってDV加害者が子どもに接近し続けられるのでは」という懸念に対しては、一定の歯止めが設けられた形だ。ただし、実際の運用においてDVの立証がどの程度容易かは、今後の課題として残る。

施行前に離婚した人も、家庭裁判所への申立てにより共同親権への変更が可能だ。この制度変更は、離婚を経験した、あるいは検討しているすべての親に影響する。

法定養育費が月2万円に:不払い対策が強化された

共同親権の導入と同時に、「法定養育費制度」が創設された。離婚時に養育費の取り決めがなくても、子ども1人あたり月額2万円の養育費支払い義務が法律上発生する。

厚生労働省の調査によると、養育費の取り決めをしている母子世帯は全体の約46%にとどまり、実際に受給できているのは約28%に過ぎない。つまり、離婚した母子世帯の7割以上が養育費を受け取れていない。法定養育費はこの「養育費不払い問題」への対策だ。

さらに、養育費には「先取特権」が付与された。これは、養育費の支払い義務者が破産した場合でも、養育費は他の債権より優先して弁済されるという仕組みだ。子どもの生活に直結する費用を、法的に最優先で保護するものである。

月2万円という金額は、子育てにかかる費用全体からすれば十分とは言えない。しかし、「取り決めがなければゼロ」だった状態から「最低でも月2万円は保障される」状態への変化は、シングルペアレント家庭にとって大きな前進だ。

こども誰でも通園制度が全国でスタート

改正子ども・子育て支援法に基づき、「こども誰でも通園制度」が2026年4月から全国で本格実施される。親の就労状況に関係なく、生後6ヶ月から3歳未満の子どもが保育施設を利用できる制度だ。利用上限は月10時間、利用料は1時間あたり300円(標準)。

従来の保育制度は「保育の必要性」(就労、疾病、介護等)が認定された家庭のみが利用できた。専業主婦(夫)家庭や自営業家庭は、原則として保育施設を利用できなかった。この制度により、すべての家庭に保育へのアクセスが開かれる。

月10時間は「週2〜3回、1回2〜3時間」程度の利用を想定している。フルタイムの保育を代替するものではないが、育児の孤立化を防ぎ、子どもの社会性発達を促す効果が期待されている。「誰にも頼れない」孤立育児の解消に向けた一歩だ。

なお、利用にあたっては事前の登録・申請が必要で、市区町村によって利用可能な施設や空き状況は異なる。居住地の自治体の情報を早めに確認しておくことをお勧めする。


働き方に関する変更:企業と従業員に新たな義務

モダンなオフィスの風景

物流効率化法:荷主企業にCLO選任義務

改正物流効率化法の第2段階が2026年4月1日に施行される。取扱貨物量9万トン以上の荷主企業や、保有車両150台以上の物流事業者が「特定事業者」に指定され、物流効率化に関する中長期計画の作成と「物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)」の選任が義務付けられる。

2024年4月の「物流2024年問題」(トラックドライバーの時間外労働上限規制)に続く第2弾であり、荷主側の責任をより明確にした点が特徴だ。ドライバーの負担軽減は運送会社だけでは解決できず、荷物を送る側の企業にも効率化の義務を課すという発想だ。

違反した場合は、勧告→公表→命令の段階的な是正プロセスを経て、命令違反には100万円以下の罰金が科される。約3,000社超の企業が「特定事業者」に該当するとみられており、物流業界に大きな変革を迫る制度だ。

消費者にとっては、配送の効率化が進むことで「即日配達」「時間指定配達」のコストが上がる可能性がある。便利さの裏にあるドライバーの負担を考えれば、多少の不便は受け入れるべき変化かもしれない。

女性活躍推進法:101人以上の企業に賃金格差公表義務

改正女性活躍推進法により、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務対象が、従来の「301人以上」から「101人以上」の企業に拡大される。対象企業は「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3区分で賃金差異を開示しなければならない。

この改正は、中小企業にも男女賃金格差の「見える化」を求めるものだ。厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」または自社ホームページで公表する義務があり、事業年度終了後おおむね3ヶ月以内に公表しなければならない。

求職者にとっては、企業選びの際に男女賃金格差を確認できるメリットがある。「女性が働きやすい会社」を客観的なデータで比較できるようになった。

カスハラ対策が全企業に義務化(2026年10月〜)

改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日からカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が全企業に義務化される。4月施行ではないが、準備は今から必要だ。

法律ではカスハラを「顧客・取引先等が行う、社会通念上許容される範囲を超えた言動で、労働者の就業環境を害すること」と定義した。従業員1人でもいるすべての事業者が対象で、相談窓口の設置、対応方針の策定、従業員保護措置が求められる。

小売業、飲食業、医療機関など、顧客と直接接する業種はもちろん、BtoBの取引先からのハラスメントも対象に含まれる。「お客様は神様」の時代は法的に終わりを迎えつつある。

なお、ストレスチェックの実施義務も50人未満の事業場に拡大される方向で、2026年4月から段階的に施行される。中小企業のメンタルヘルス対策が新たなフェーズに入る。


まとめ:2026年4月の制度変更一覧

チェックリストとペンが置かれたデスク
分野制度変更影響を受ける人ポイント
お金子育て支援金の新設健康保険加入者全員月約250円の負担増(2026年度)
お金在職老齢年金の緩和働くシニア層支給停止基準が月51万→65万円に
お金扶養認定ルール変更パート労働者残業で130万超えても扶養継続可能に
お金年金額4年連続増年金受給者国民年金満額 月7万608円
お金企業型DC上限撤廃企業型DC加入者会社拠出額以下の制限がなくなる
交通自転車の青切符制度16歳以上の自転車利用者スマホながら運転12,000円
交通側方通過の安全間隔ドライバー・自転車利用者1.5m以上または徐行が義務
交通新基準原付原付利用者125cc以下・4kW以下に再定義
家族共同親権の導入離婚する・した親約77年ぶりの親権制度改正
家族法定養育費の創設離婚後の親取り決めなしでも月2万円
家族こども誰でも通園制度0〜2歳の子を持つ全家庭就労不問で月10時間利用可能
労働物流効率化法荷主・物流企業CLO選任と中長期計画が義務
労働女性活躍推進法改正101人以上の企業男女賃金格差の公表義務拡大

2026年4月は、お金・交通・家族・働き方のすべてが同時に変わる「制度変更の集中月」だ。すべてを詳細に把握する必要はないが、自分の生活に直結する変更だけは確実に押さえておきたい。パート労働者なら扶養認定ルール、自転車通勤者なら青切符制度、子育て中の家庭なら支援金と通園制度。「知らなかった」で損をしないために、この記事をブックマークしておいてほしい。