コンビニのサンドイッチ、カップラーメン、菓子パン、清涼飲料水。日本人が1日に摂取するカロリーの約3〜4割は「超加工食品(UPF)」から来ているとする研究がある。2025年、医学誌『The Lancet』がUPFの健康リスクに関する3部作の論文を掲載し、世界的に議論が加速した。超加工食品とは何か。なぜ問題なのか。そして、どう避ければよいのか。最新の科学的知見に基づいて解説する。

この記事でわかること
  • 超加工食品(UPF)の定義とNOVA分類の仕組み
  • 最新の疫学研究が示す具体的な健康リスク
  • 日本の食卓に潜む身近なUPFの実態
  • 現実的で続けやすい「避け方」の実践法
  • 完全排除ではなく、リスクを下げるバランス思考

超加工食品(UPF)とは何か

スーパーマーケットの加工食品コーナー

NOVA分類の4グループ

超加工食品を理解するには、まず「NOVA分類」を知る必要がある。ブラジル・サンパウロ大学のカルロス・モンテイロ教授が2009年に提唱した食品分類法で、加工の程度によって食品を4つのグループに分けるものである。

グループ1は「未加工・最小加工食品」で、生鮮野菜、果物、肉、魚、卵、牛乳、穀物などが該当する。グループ2は「加工に使う調味料」で、塩、砂糖、油、バター、酢などである。グループ3は「加工食品」で、缶詰、チーズ、燻製肉、パンなど、グループ1と2を組み合わせて作られたシンプルな加工品を指す。

そしてグループ4が「超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)」である。工業的な製造プロセスを経て、家庭のキッチンでは使わないような成分(高果糖コーンシロップ、水素添加油脂、加工でんぷん、乳化剤、増粘剤、人工甘味料、着色料など)を含む食品群である。

NOVA分類の核心は、「何を食べるか」だけでなく「どう加工されたか」に注目する点にある。同じ小麦粉でも、家庭で焼いたパンはグループ3、工場で大量生産された菓子パン(乳化剤、イーストフード、保存料などを含む)はグループ4に分類される。

なぜ「超加工」が問題なのか

超加工食品の問題は、単に「添加物が多い」ということだけではない。食品の構造そのものが工業的に変化させられることで、人間の食欲制御システムを攪乱する点が根本的な問題とされている。

超加工食品は「ハイパー・パラタビリティ(超口当たりの良さ)」を追求して設計されている。塩分、糖分、脂肪の組み合わせが、脳の報酬系を過剰に刺激し、「もっと食べたい」という衝動を引き起こす。これは自然の食品では起こりにくい反応である。

さらに、超加工食品は食品本来の繊維構造が破壊されているため、咀嚼回数が少なく、早食いになりやすい。満腹シグナルが脳に届く前に大量に食べてしまう「パッシブ・オーバーコンサンプション(受動的過食)」が起こりやすいとされている。

米国国立衛生研究所(NIH)が2019年に発表した厳密な介入実験では、超加工食品を自由に食べられる環境に置かれた被験者は、未加工食品のグループと比較して1日あたり約500kcal多く摂取し、2週間で約1kg体重が増加した。食事のカロリー密度や栄養素構成を揃えても、超加工食品のほうが過食を引き起こしたのである。


最新研究が示す健康リスク

医学研究論文とデータ分析のイメージ

心血管疾患との関連

2025年に『The Lancet』に掲載された大規模レビューでは、UPFの摂取量が多いほど心血管疾患のリスクが有意に上昇することが示された。具体的には、UPFからのカロリー摂取割合が10%増加するごとに、心血管疾患の発症リスクが約6〜12%上昇するとする複数のメタ解析がある。

メカニズムとしては、超加工食品に含まれるトランス脂肪酸、過剰なナトリウム、精製糖が血管内皮機能を障害し、動脈硬化を促進する経路が考えられている。また、乳化剤などの添加物が腸内細菌叢を変化させ、全身性の慢性炎症を引き起こす可能性も指摘されている。

日本人を対象とした研究はまだ少ないが、欧米で蓄積されたエビデンスは、食生活が欧米化しつつある日本にも示唆を与えるものである。特に若年層のUPF摂取割合が高い点は、将来的な心血管リスクの観点から懸念される。

ただし、これらの研究の多くは観察研究であり、「UPFを食べたから病気になった」という因果関係を直接証明したものではない点には留意が必要である。UPFの摂取が多い人は、運動不足や喫煙といった他のリスク因子も持ちやすいという交絡の問題が指摘されている。

肥満・糖尿病のリスク

肥満との関連は最もエビデンスが蓄積されている領域である。前述のNIHの介入実験に加え、複数のコホート研究がUPF摂取と体重増加の相関を報告している。2025年に『Nutrition & Metabolism』誌に掲載された研究では、若年成人のUPF摂取量の変化がインスリン抵抗性に影響を及ぼすことが示された。

2型糖尿病との関連も強い。UPFに含まれる精製糖や高果糖コーンシロップが血糖値の急上昇を引き起こし、膵臓への負荷を増大させる。長期的には、インスリン抵抗性の悪化を通じて2型糖尿病の発症リスクを高めると考えられている。

日本では2型糖尿病の患者数が約1,000万人、予備群を含めると約2,000万人に上るとされている(厚生労働省「国民健康・栄養調査」2016年時点)。その一因としてUPFの摂取増加が関与している可能性は、今後の検証が待たれるテーマである。

特に問題視されているのは、清涼飲料水である。砂糖入りの飲料は、固形食品よりも血糖値の上昇が急激で、かつ満腹感を得にくい。1日に1本の砂糖入り飲料を摂取する習慣は、2型糖尿病のリスクを約26%増加させるとするメタ解析がある。

精神疾患との関連

近年注目されているのが、UPFと精神疾患との関連である。複数のメタ解析が、UPF摂取量の多さとうつ病リスクの上昇に相関を認めている。腸内細菌叢の変化を介して脳機能に影響する「腸脳相関」のメカニズムが注目されている。

腸内に存在する細菌は、セロトニンやGABAといった神経伝達物質の産生に関与している。超加工食品に含まれる乳化剤やカラギナンなどの添加物が腸内細菌叢のバランスを乱し、炎症性サイトカインの産生を増加させることで、脳の炎症反応を促進する可能性が指摘されている。

認知機能への影響も研究されている。パーキンソン病や認知症のリスクとUPF摂取の関連を示す疫学研究が報告されており、高齢化が進む日本にとって見過ごせないテーマとなっている。

ただし、精神疾患とUPFの関連については、逆の因果(うつ状態の人がUPFを多く摂取する傾向がある)の可能性も排除できない。因果関係の解明にはさらなる介入研究が必要である。


日本の食卓に潜むUPF

コンビニの棚に並ぶ食品パッケージ

身近なUPFの具体例

日本の食卓におけるUPFは、思っている以上に広範囲に及ぶ。カップラーメン、菓子パン、スナック菓子、清涼飲料水は分かりやすい例だが、それだけではない。コンビニのおにぎり(pH調整剤、グリシン等を含む)、市販の惣菜パン、冷凍食品の多く、ハム・ソーセージ(リン酸塩、発色剤を含む)、ドレッシング、マヨネーズ風調味料なども該当する。

「健康的」なイメージのある食品にもUPFは潜んでいる。市販のグラノーラバー、フルーツフレーバーのヨーグルト(人工甘味料、増粘剤入り)、プロテインバー、野菜ジュースの一部なども、NOVA分類ではグループ4に該当する場合がある。

日本で特に見落とされがちなのが、穀類加工品である。超加工食品の摂取内容として穀類およびでんぷん質の食品が32.2%と最大の割合を占めている。工場で大量生産されたパン、うどん、焼きそばの麺などが該当する。

判断基準の一つは、原材料表示の長さと内容である。原材料名に5つ以上の「聞き慣れない成分」(加工でんぷん、増粘多糖類、カラメル色素、乳化剤、イーストフードなど)が並んでいれば、UPFである可能性が高い。

日本人のUPF摂取実態

日本人のUPF摂取割合に関するデータは、近年蓄積が進んでいる。総エネルギー摂取量に占めるUPFの割合は、平均で約3〜4割とされている。この数値は、米国(約60%)やイギリス(約57%)に比べれば低いが、決して少ないとは言えない水準である。

年代別に見ると、18〜39歳の若年層ではUPF摂取割合が約50%近くに達するとする報告がある。40〜59歳で約45%、60〜79歳で約30%超と、若い世代ほどUPFへの依存度が高い傾向にある。

背景には、単身世帯の増加、長時間労働による調理時間の不足、コンビニエンスストアの高密度な展開がある。「手軽さ」と「安さ」を求める消費行動が、結果としてUPF摂取を押し上げている構造である。

一方で、日本には味噌、醤油、納豆、漬物といった伝統的な発酵食品の文化がある。これらはNOVA分類ではグループ3に該当し、UPFには含まれない。日本の食文化の強みを活かしつつ、UPFを減らすアプローチが現実的である。


実践的な避け方

新鮮な野菜と果物が並ぶキッチン

原材料表示を読む習慣

UPFを減らす第一歩は、購入前に原材料表示を確認する習慣をつけることである。日本の食品表示法では、原材料は使用量の多い順に記載される。先頭に砂糖や果糖ぶどう糖液糖が来る製品は、UPFの可能性が高い。

「家庭のキッチンにないもの」がリストに含まれていれば注意信号である。加工でんぷん、タンパク加水分解物、乳化剤、増粘多糖類、pH調整剤、カラメル色素、アスパルテームなどは、工業的加工のマーカーとなる成分である。

すべてのUPFを排除する必要はない。重要なのは「知らずに大量に摂取している」状態を脱することである。原材料表示を読むことで、自分が何を食べているのかを把握し、意識的に選択する力が身につく。

特に毎日食べるもの(パン、朝食のシリアル、ヨーグルト、ドレッシングなど)は、原材料表示がシンプルなものに切り替えるだけで、UPF摂取を大幅に減らせる。1日の食事のうち1食だけでも「未加工の食材」から作る習慣を持つことが、現実的なスタート地点となる。

調理の手間を減らす工夫

「UPFを避ける=毎食自炊する」ではない。忙しい現代人にとって、完全自炊は持続可能でない場合が多い。重要なのは、手間を最小限にしながらUPFの摂取割合を下げる工夫である。

具体的な方法として、週末にまとめて炊飯し冷凍保存する、カット野菜(無添加のもの)を活用する、缶詰(トマト缶、ツナ缶、豆の缶詰などのグループ3食品)を常備する、味噌汁を毎日作る(出汁パック+味噌+旬の野菜だけで完成)といったアプローチが有効である。

外食やテイクアウトでも、選び方次第でUPFを減らすことは可能である。定食屋の焼き魚定食、そば屋のかけそば、寿司(回転寿司を含む)など、素材を活かした調理法の料理を選ぶことが一つの指針となる。

完璧主義に陥ると続かない。「80%の食事を未加工・最小加工食品から構成する」という緩やかな目標が、科学的にも十分な効果を発揮するとされている。残りの20%は利便性や楽しみとしてUPFを許容する柔軟さが、長期的な継続につながる。

Point:80/20ルールで十分
UPFの完全排除は不要である。食事の8割を未加工食品にするだけで健康リスクは大幅に下がる。残り2割は利便性として許容するのが長続きのコツである。

子どもの食環境を守る

特に注意が必要なのは、成長期の子どもの食環境である。子ども向けの加工食品やスナック菓子の多くはUPFに該当し、味覚の形成期に超加工食品に慣れてしまうと、天然の食材の味を「物足りない」と感じるようになるリスクがある。

学校給食は、日本の食育の重要な基盤である。多くの自治体で「手作り給食」が実施されているが、一部ではコスト削減のためにUPFが使われるケースもある。保護者が給食の内容に関心を持つことが、子どもの食環境を守る第一歩となる。

家庭では、おやつの選択が特に重要である。市販の菓子パンやスナック菓子の代わりに、果物、ナッツ、おにぎり、干し芋といったシンプルなおやつを日常的に取り入れることで、UPF摂取を自然に抑えられる。

食品業界に対しては、添加物の使用量削減や原材料の透明性向上を求める消費者の声が重要になる。米国では新政権が合成着色料の段階的廃止を食品業界に要求するなど、政策レベルでの動きも始まっている。日本でも、消費者の意識と行動が市場を変える力を持っている。


まとめ

彩り豊かなヘルシーな食卓

超加工食品(UPF)は現代の食生活に深く浸透しており、完全排除は現実的ではない。しかし、摂取割合を意識的に下げることは、健康リスクの低減に有効である。以下に、ライフスタイル別のアプローチをまとめた。

ライフスタイル 課題 おすすめアプローチ
忙しい一人暮らし 自炊する時間がない 週末まとめ炊飯+缶詰活用+味噌汁
子育て世帯 子どものおやつ・食事の管理 果物・ナッツ中心のおやつ+給食内容の確認
外食・コンビニ中心 選択肢が限られる 定食・そば・寿司を優先+飲料を水・お茶に
健康意識は高いが続かない 完璧主義で挫折する 80/20ルール+原材料表示チェックから開始
すでに生活習慣病のリスクあり 食事の根本的な見直しが必要 管理栄養士への相談+段階的なUPF削減

UPFの問題は「食べてはいけない」という禁止の発想ではなく、「何をどう選ぶか」という選択の問題である。原材料表示を読む習慣をつけ、少しずつ未加工の食材に置き換えていくこと。それが、現代の食環境の中で健康を守るための、最も実践的なアプローチである。