英国の調査会社Edited(2025年12月発表)によると、メンズニット市場において「クロシェ」「透かし編み」関連商品の前年比増加率は43%に達した。かつて「おばあちゃんの手編み」と呼ばれていたグラニーニットが、2026年春夏のメンズファッションにおいて無視できないトレンドとなっている。繊細なメッシュ調の編み地、素肌が透けるレイヤード感、スウェットに代わる季節の変わり目の選択肢として、グラニーニットはいま最も注目すべきアイテムの一つである。

この記事でわかること
  • グラニーニットの定義と特徴的なディテール
  • 2026年春夏にメンズで注目される背景
  • 失敗しないメンズの着こなしルール
  • 手に入れやすいおすすめブランド5選
  • 体型・スタイル別の取り入れ方

グラニーニットとは何か

繊細な編み目が美しいニットウェアのクローズアップ

クロシェ編みが生む独特の表情

グラニーニットの最大の特徴は、クロシェ(かぎ針)編みによる立体的な編み地にある。機械編みのフラットな表面とは異なり、ひと目ひと目に手仕事のような凹凸と陰影が生まれる。この質感が「グラニー(おばあちゃん)」の名の由来であり、同時にこのニットが持つ最大の魅力でもある。

クロシェ編みにはさまざまなパターンが存在する。グラニースクエアと呼ばれるモチーフ繋ぎ、フラワーモチーフ、シェルステッチなど、いずれも手編みの温かみを感じさせるデザインである。2026年のトレンドでは、単色でトーンを抑えたクロシェが主流となっており、過度な装飾性を排したミニマルなアプローチが好まれている。

素材には綿やリネン、シルク混紡の細番手糸が使われることが多い。ウール主体の冬物ニットとは異なり、通気性に優れた軽やかな仕上がりとなるため、春から初夏にかけてのシーズンに適している。肌に直接触れてもチクチクしない素材選びが、メンズでの普及を後押ししている。

透かし編みがつくるレイヤードの奥行き

グラニーニットのもう一つの核となるディテールが透かし編み(オープンワーク)である。編み目の間に意図的な隙間をつくることで、インナーの色や素肌がほのかに透ける。この「見え隠れ」の効果が、一枚で着るよりもレイヤードで真価を発揮する理由である。

透かし編みの度合いはアイテムによって大きく異なる。全面が透けるフルメッシュ型から、部分的にオープンワークを配した控えめなデザインまで幅広い。メンズで取り入れる場合は、透け感が控えめなタイプから始めるのが無難である。胸元や肩まわりに部分的な透かしが入ったデザインであれば、抵抗感なく着用できる。

レイヤードの相手としては白Tシャツが鉄板である。透かし部分から白が覗くことでコントラストが生まれ、清潔感と軽やかさを同時に演出できる。黒やネイビーのインナーを合わせるとモードな印象になるが、春夏シーズンでは重たく見えるリスクがある。まずは白を基本とし、慣れてからトーンの実験をするのが賢明である。

通常のニットとの明確な違い

一般的なニットウェアとグラニーニットの違いは、編み方と用途の両面に現れる。通常のニットは機械編みによる均一な編み地が特徴で、保温性を第一の目的としている。対してグラニーニットは、装飾性と通気性を重視した編み地であり、防寒具というよりも「見せるレイヤー」としての役割が強い。

着用シーンも異なる。通常のニットが秋冬の主役アイテムであるのに対し、グラニーニットは春夏のスウェット代替として機能する。気温15〜22度前後の季節の変わり目において、Tシャツ一枚では心もとないが、スウェットでは暑い。そのちょうど中間を埋めるのがグラニーニットの立ち位置である。

価格帯にも違いがある。クロシェ編みや透かし編みは機械化が難しく、手作業の工程が多い。そのため同ブランドの通常ニットと比較して1.5〜2倍の価格設定になることが一般的である。ただしH&Mなどのファストファッションブランドが参入したことで、5,000円前後のエントリーモデルも登場している。

比較項目通常のニットグラニーニット
主な編み方機械編み(天竺、リブ等)クロシェ編み、透かし編み
通気性低〜中
適したシーズン秋冬春夏
主な用途防寒・保温レイヤード・装飾
価格帯(目安)3,000〜30,000円5,000〜50,000円

なぜ2026年春夏に注目されているのか

春のストリートを歩くファッショナブルな人々

ランウェイから広がったクラフト回帰の潮流

2025年秋冬のコレクションにおいて、Loewe、Bode、Dries Van Notenといったメゾンが揃ってクロシェニットをメンズコレクションに投入した。ハンドクラフトの質感を前面に押し出したスタイリングは、デジタル一辺倒の時代に対するカウンターカルチャーとしてメディアの注目を集めた。

この流れは2026年春夏コレクションでさらに加速している。ランウェイだけでなく、ミラノやパリのストリートスナップにもグラニーニットを着用した男性の姿が増えた。ファッション誌の特集やSNSでの露出が重なり、トレンドとしての認知度が一気に高まった形である。

クラフト回帰の背景には、大量生産・大量消費への疑問がある。手仕事の痕跡が残るグラニーニットは、着る人の個性を主張するアイテムとして、画一的なファストファッションとの差別化を図りたい層に支持されている。サステナビリティへの関心が高まるなか、長く着られる一点もの的な価値が評価されているのである。

ジェンダーレスファッションの定着

ファッション業界においてジェンダーレスはもはや新しい概念ではない。しかし2026年に入り、その浸透度は新たな段階に達している。従来は「レディースのアイテムをメンズが着る」という文脈で語られることが多かったが、現在はそもそもジェンダーの区分なくデザインされるアイテムが増えている。

グラニーニットはこの文脈において象徴的な存在である。「おばあちゃんのニット」という名称自体がジェンダーを含んでいるが、実際の着用においては性別を問わないシルエットと素材感を持つ。オーバーサイズのクロシェニットは、男女どちらが着てもバランスが取れるように設計されていることが多い。

メンズファッション誌のアンケートでも、20〜30代男性の約6割が「レディース由来のデザインを取り入れることに抵抗がない」と回答するなど、意識の変化は明確である。グラニーニットは、その「おばあちゃん」というネーミングとは裏腹に、最もジェンダーニュートラルなニットアイテムの一つとなっている。

スウェットに代わる実用的な選択肢

春先のワードローブにおいて、スウェットは長年にわたり不動の地位を築いてきた。しかし裏毛素材のスウェットは通気性に難があり、気温20度を超えると蒸れやすい。かといってTシャツ一枚では肌寒い日もある。この「スウェットとTシャツの隙間」を埋めるアイテムとして、グラニーニットが浮上しているのである。

グラニーニットの透かし編みは、自然な換気機能を持つ。風が編み目を通り抜けるため、体温調節が容易である。インナーとの重ね着を前提としているため、気温の変化に応じてニットを脱ぎ着するだけで対応できる柔軟性も魅力である。

見た目の面でもスウェットとの差別化は明確である。スウェットがカジュアルでスポーティな印象を与えるのに対し、グラニーニットは同じリラックスした着心地でありながら、上品さと手仕事の温かみを両立する。デートや食事の場など、スウェットでは少し砕けすぎる場面でも、グラニーニットなら自然に馴染む。

Point:気温15〜22度の「隙間」を埋めるニット
スウェットでは暑く、Tシャツでは寒い季節の変わり目に、通気性と上品さを兼ね備えたグラニーニットが最適解となる。

メンズでの着こなしルール

ミニマルなコーディネートの男性

インナーは白Tシャツが鉄板

グラニーニットをメンズが着る際、最も重要なのはインナーの選択である。結論から言えば、白のクルーネックTシャツが最適解である。透かし編みの隙間から覗く白が、全体のコーディネートに清潔感と明るさをもたらす。

Tシャツの素材にも注意を払いたい。薄手のジャージー素材であればニットとの重ね着でもゴワつかず、シルエットが崩れにくい。逆にヘビーウェイトのTシャツは、透かし編みの繊細さとバランスが悪くなるため避けるべきである。目安としては、5.0〜6.0オンス程度の中肉が適している。

Vネックのインナーは避けた方がよい。グラニーニットの首元はクルーネックまたはやや広めの開きが多く、Vネックのインナーを合わせると胸元の露出が過剰になりやすい。クルーネックのTシャツを合わせることで、ニットの透かし部分とインナーの境界が自然に馴染む。

サイズ選びの基準

グラニーニットのサイズ選びは、ジャストフィットからワンサイズアップの範囲が推奨される。ジャストフィットであれば体のラインが適度に出て、クリーンな印象になる。ワンサイズアップにすると肩が少し落ち、リラックスしたムードが生まれる。

避けるべきはツーサイズ以上のオーバーサイズである。グラニーニットは編み地自体に情報量が多いため、シルエットまで大きくなるとコーディネート全体が「だらしない」方向に振れてしまう。とくにクロシェ編みのモチーフ柄が入ったタイプは、オーバーサイズにすると柄が間延びして見えるため注意が必要である。

着丈はベルトラインにかかる程度が目安である。タックインする場合はジャストサイズ、タックアウトで着る場合はワンサイズアップと、スタイリングの方針に合わせてサイズを選ぶとよい。試着時にはインナーのTシャツを着た状態で確認することが重要である。ニット単体で合わせるとタイトに感じ、必要以上に大きなサイズを選んでしまう失敗が起こりやすい。

ボトムスの合わせ方

グラニーニットのトップスに装飾性がある以上、ボトムスはシンプルに徹するのが鉄則である。シルエットはストレートまたはテーパードが最適で、トップスのリラックス感とバランスを取ることができる。

デニムとの相性は抜群である。色落ちしたヴィンテージ風のデニムなら、グラニーニットの手仕事感と調和する。リジッドデニムを合わせればドレッシーな方向にシフトし、食事やギャラリーなどの場面にも対応できる。いずれの場合もスリムすぎるスキニーは避けた方がよい。上半身のボリュームとのバランスが崩れるためである。

スラックスとの組み合わせも有効である。特にタックの入ったワイドスラックスは、グラニーニットのクラフト感をモダンに昇華させる。色はベージュ、グレー、オリーブといった中間色が合わせやすい。黒のスラックスはシャープになりすぎるため、ニットのリラックス感と相反する可能性がある。

シューズはローファー、キャンバススニーカー、レザーサンダルが三大選択肢である。足元を軽くすることで春夏の季節感が出る。ごついブーツやハイテクスニーカーは、グラニーニットの繊細さと噛み合わないため避けるのが無難である。

Point:上に足す分、下は引くのが原則
グラニーニットの装飾性が高い分、ボトムスとシューズはシンプルに。ストレートデニム+ローファーが最も失敗の少ない組み合わせである。

おすすめブランド5選

セレクトショップに並ぶニットウェア

OUR LEGACY

スウェーデン発のOUR LEGACYは、グラニーニットの文脈で最も頻繁に名前が挙がるブランドの一つである。2026年春夏コレクションでは、リネン混のオープンワークニットを複数型展開しており、メッシュの粗さや編みパターンに豊富なバリエーションがある。

OUR LEGACYの強みは、クラフト感と都会的なミニマリズムの両立にある。色展開はオフホワイト、サンドベージュ、ペールブルーなど、ニュートラルカラーが中心。過度な装飾を排しながらも、近づいて見ると編み目の複雑さに気づかされる、奥行きのあるデザインが特徴である。

価格帯は30,000〜50,000円程度。決して安くはないが、素材と縫製のクオリティを考えれば妥当な水準である。サイズ感はやや大きめに設計されているため、普段のサイズかワンサイズダウンを試着で確認することを勧める。公式オンラインストア(ourlegacy.com)のほか、国内ではセレクトショップでの取り扱いがある。

AURALEE

日本ブランドのAURALEEは、素材へのこだわりで知られるブランドである。グラニーニットにおいても、原料の糸から独自に開発する姿勢は変わらない。スーピマコットンやカシミヤシルクなど、上質な素材を用いた透かし編みニットは、着た瞬間に違いがわかる肌触りを実現している。

AURALEEのグラニーニットは、全体的に控えめな透け感に設計されている。「透かし編みに挑戦したいが、あまり主張が強いのは避けたい」という層に最適である。カラーはホワイト、ライトグレー、ネイビーなどベーシックなものが多く、手持ちのワードローブに馴染みやすい。

価格帯は25,000〜45,000円程度。国内ブランドのため試着がしやすく、サイズ選びで失敗しにくいのも利点である。公式オンラインストア(auralee.jp)や全国のセレクトショップで購入可能である。

NEEDLES

ネペンテスが展開するNEEDLESは、独特のパターンと色使いで知られるブランドである。グラニーニットにおいてもその個性は健在で、マルチカラーのモチーフ編みやパッチワーク的なデザインを得意とする。「主張のあるグラニーニットが欲しい」という人にはうってつけである。

NEEDLESのクロシェニットは、モヘアやアクリル混紡の糸を用いた独特のファジーな質感が特徴である。他のブランドとは明らかに異なるテクスチャーで、一目でNEEDLESとわかる存在感がある。カーディガン型のラインナップも豊富で、羽織りとしての使い勝手が良い。

価格帯は20,000〜40,000円程度。NEEDLESは古着市場でも人気が高く、リセールバリューが維持されやすい点も見逃せない。公式取扱店のネペンテス各店舗のほか、セレクトショップでの展開がある。

STÜSSY

ストリートウェアの代名詞であるSTÜSSYは、2024年頃からクロシェニットを継続的にリリースしている。グラニーニットをストリート文脈で着こなしたい層に向けた、カジュアルなデザインが魅力である。ロゴの配置も控えめで、ストリートブランドにありがちな主張の強さがない。

STÜSSYの強みは、価格の手頃さとサイズ展開の豊富さである。S〜XXLまでの幅広いサイズ展開は、体型を選ばない。デザインはシンプルなオープンワークニットが中心で、初めてグラニーニットに挑戦する人にとってハードルが低い。

価格帯は15,000〜25,000円程度。公式オンラインストア(stussy.com)および国内の直営店、一部セレクトショップで購入可能である。人気カラーは発売後すぐに完売することが多いため、気になる場合は早めのチェックを勧める。

H&M

最も手軽にグラニーニットを試せるのがH&Mである。2026年春夏シーズンでは、メンズラインにクロシェ編みのプルオーバーやカーディガンが複数ラインナップされている。価格は3,000〜6,000円程度と、他のブランドと比較して圧倒的に低い。

素材はコットンやアクリル混紡が中心で、上位ブランドと比べると質感に差はある。しかし「グラニーニットが自分に似合うかどうか試してみたい」という目的には十分である。トレンドアイテムは来シーズンに持ち越せるかわからないため、まずは低価格で試すというアプローチは合理的である。

H&Mの店舗は全国に展開しており、実店舗での試着が容易な点も大きなメリットである。オンラインストア(hm.com)でも購入可能で、返品も無料対応している。グラニーニット入門としてH&Mから始め、気に入れば上位ブランドにステップアップするのが賢い進め方である。

ブランド価格帯(税込目安)特徴おすすめの層
OUR LEGACY30,000〜50,000円ミニマル+クラフト感上質なベーシックを求める人
AURALEE25,000〜45,000円素材重視、控えめな透け感さりげなく取り入れたい人
NEEDLES20,000〜40,000円個性的な柄と色使い主張のあるスタイルが好きな人
STÜSSY15,000〜25,000円ストリート文脈の気軽さカジュアルに着たい人
H&M3,000〜6,000円圧倒的な低価格まず試してみたい人

まとめ──グラニーニットの取り入れ方

春の日差しのなかリラックスした装いの男性

グラニーニットは、クロシェ編みと透かし編みによる繊細な編み地が特徴のニットウェアであり、2026年春夏のメンズファッションにおける注目アイテムである。スウェットの代替として気温15〜22度の季節の変わり目に機能し、レイヤードによる奥行きのあるスタイリングを可能にする。

着こなしの基本は、白Tシャツのインナーにジャスト〜ワンサイズアップのニットを合わせ、ボトムスはストレートかテーパードでシンプルにまとめること。上半身の装飾性を下半身の引き算で整えるのが成功の鍵である。

タイプおすすめブランド選ぶべきデザイン
初挑戦で失敗したくないH&M、STÜSSY単色のオープンワーク、控えめな透け感
上質さを重視したいAURALEE、OUR LEGACY天然素材の透かし編み、ニュートラルカラー
個性を出したいNEEDLESマルチカラーのモチーフ編み、カーディガン型
ストリートに合わせたいSTÜSSYリラックスフィットのプルオーバー

グラニーニットは「おばあちゃんの手編み」という名前の印象とは裏腹に、2026年の男性ファッションにおいて最も洗練された選択肢の一つである。まずは手頃な価格帯で一枚試し、自分のスタイルとの相性を確かめてみてほしい。