WWDJAPANが2026年春夏トレンドとして命名した「フレッピー(Freppy)」。フレンチシックとプレッピーの融合を意味するこの造語が、ファッション業界で急速に浸透している。Googleトレンドでは「フレッピー」の検索ボリュームが2026年2月から3月にかけて約3倍に急伸。パリコレとアイビーリーグの美学が交差する新しいスタイルは、なぜいまこれほど注目されているのか。

この記事でわかること
  • フレッピーの定義とWWDJAPAN命名の背景
  • フレンチシックとプレッピーそれぞれの本質
  • フレッピーを構成するキーアイテム5選と着こなし方
  • 2026年春夏にフレッピーを始める3ステップ

フレッピーとは何か

フレンチシックとプレッピーが融合したスタイリング

WWDJAPANが命名した新トレンドワード

フレッピー(Freppy)とは、French(フレンチ)とPreppy(プレッピー)を掛け合わせた造語である。2026年春夏のコレクション分析を行ったWWDJAPANが、複数のメゾンに共通するスタイリングの傾向を一言で表現するために生み出した。

具体的には、パリジェンヌ的なエフォートレスさと、アメリカ東海岸の名門校に由来するプレッピーの端正さを一つのルックに落とし込むスタイルを指す。きちんと感と抜け感が同居するこのバランスは、従来のどちらか一方のスタイルでは実現できなかったものである。

背景には、パンデミック以降に加速した「知的で品のある装い」への回帰がある。カジュアル一辺倒だったストリートウェアの潮流が落ち着き、構築的でありながら堅苦しくないスタイルが求められるようになった。フレッピーはその需要に対する明確な回答である。

注目すべきは、フレッピーが単なるミックススタイルではない点だ。フレンチの「引き算の美学」とプレッピーの「様式美」が化学反応を起こすことで、どちらの要素も単体より魅力的に映る。2026年春夏の最旬スタイルとして急浮上した理由はここにある。

なぜ2026年春夏に注目が集まっているのか

2026年春夏コレクションでは、MAISON KITSUNÉやAMI Parisといったパリ拠点のブランドが、ボタンダウンシャツやチノパンといったプレッピーの定番アイテムを積極的に取り入れた。一方で、Ralph LaurenやJ.CREWはフレンチ的なニュアンスカラーやルーズなシルエットを採用している。

この双方向の歩み寄りが、フレッピーという一つの潮流を形成した。デザイナー側が意図的にクロスオーバーを仕掛けているのである。SNSの拡散力も大きい。Instagramでは「#freppy」のハッシュタグが急増し、スタイリストやインフルエンサーがこぞってフレッピー的なコーディネートを発信している。

もう一つの要因は、ジェンダーレスファッションの成熟である。フレッピーのキーアイテムであるストライプシャツ、チノパン、ローファーは性別を問わず着用できる。包括的なファッションを求める時代の気分と、フレッピーの汎用性が見事に合致しているのだ。

さらに、円安の影響で海外ブランドの価格が上昇するなか、ベーシックアイテムの組み合わせで洗練された印象を作れるフレッピーは、コストパフォーマンスの面でも支持されている。高価な一点モノに頼らず、手持ちのワードローブを活かせる点が実用的である。


フレンチスタイルの本質

パリの街角を歩くエフォートレスなスタイル

エフォートレスという哲学

フレンチスタイルを語るうえで外せないのが「エフォートレス(effortless)」という概念である。直訳すれば「努力を感じさせない」。完璧に作り込むのではなく、あえて隙を残すことで生まれる自然体の美しさを指す。

パリジェンヌのスタイリングに共通するのは、全身をブランドで固めない姿勢である。ヴィンテージのジャケットにシンプルなTシャツ、足元はスニーカー。価格やブランドの格ではなく、自分のスタイルに合うかどうかで服を選ぶ。この自立した審美眼こそがフレンチスタイルの核心だ。

ヘアスタイルにも同じ原則が貫かれている。カーラーで巻いた完璧な巻き髪ではなく、風でなびくままのウェーブ。メイクもナチュラルに仕上げ、素肌感を大切にする。「作り込んでいないように見える」ために、実は高度な計算が必要なのがフレンチスタイルの奥深さである。

フレッピーにおいてこのエフォートレスは、プレッピーの「きちんと感」を和らげる役割を果たす。紺ブレのボタンを一つ外す、シャツの裾をハーフタックにする。こうした小さな崩しが、フレッピー特有の「こなれた品格」を生み出している。

ニュアンスカラーの使い方

フレンチスタイルのカラーパレットは、ニュアンスカラーが中心である。グレージュ、エクリュ、モーヴ、ダスティローズなど、原色ではなくくすみを帯びた中間色が好まれる。これらの色は主張しすぎず、着る人の肌や雰囲気に自然に馴染む。

パリのセレクトショップに並ぶ服を見ると、一見地味に映るかもしれない。しかし、ニュアンスカラー同士を重ねると、奥行きのある色彩のグラデーションが生まれる。トーン・オン・トーンの配色は、フレンチスタイルの真骨頂である。

フレッピーでは、このニュアンスカラーにプレッピーの差し色を加える。ネイビーやバーガンディ、フォレストグリーンといったプレッピーの定番色を、フレンチ的なグレージュやオフホワイトと組み合わせることで、知的でありながら華やかなコーディネートが完成する。

重要なのは、色の面積バランスである。ニュアンスカラーを全体の70%、プレッピーの差し色を30%程度に抑えると、フレッピーらしいバランスになる。差し色が多すぎるとプレッピー寄りに、少なすぎるとフレンチの延長線上に留まってしまう。


プレッピーの再解釈

クラシカルなプレッピースタイルの要素

アイビーリーグから生まれた様式美

プレッピーの起源は、1950年代のアメリカ東海岸にある。ハーバード、イェール、プリンストンといったアイビーリーグの学生たちが日常的に着ていた服装が、やがて一つのスタイルとして確立された。ボタンダウンシャツ、チノパン、ローファー、紺ブレザーがその象徴である。

プレッピーの本質は「所属の証」にある。特定のスクールカラーやクラブのエンブレムを身につけることで、コミュニティへの帰属意識を表現した。ストライプのレジメンタルタイや、校章入りのブレザーはその名残である。ファッションが個人の趣味ではなく、社会的なアイデンティティと結びついていた時代の産物だ。

1980年代にRalph Laurenがプレッピーをハイファッションに昇華させたことで、このスタイルは学生服の域を超えた。映画『いまを生きる』や『ウォール街』に登場するプレッピールックは、知性と成功を象徴するスタイルとして広く認知されるようになった。

しかし、2000年代以降はストリートウェアの台頭により、プレッピーは「古臭い」「保守的」というイメージが付きまとうようになる。フレッピーは、この停滞したプレッピーに新たな命を吹き込む試みでもあるのだ。

2026年版プレッピーの新しいルール

フレッピーにおけるプレッピーは、1950年代の忠実な再現ではない。シルエット、素材、組み合わせのすべてにおいて現代的な再解釈が加えられている。もっとも顕著な変化はシルエットである。従来のプレッピーはジャストサイズが基本だったが、フレッピーではやや余裕のあるリラックスフィットが主流になっている。

素材選びにも変化がある。オックスフォードクロスのシャツに代わり、リネン混やウォッシュドコットンのシャツが好まれる。着込むほどに味が出る素材感は、フレンチ的なこなれ感を演出するために欠かせない要素だ。

カラーブロッキングも2026年版プレッピーの特徴である。従来は紺、白、ベージュの3色が定番だったが、フレッピーでは原色のカラーブロッキングを大胆に取り入れる。赤と紺、グリーンとオフホワイトなど、コントラストの効いた配色がルックに活力を与えている。

アクセサリーの使い方も進化している。レジメンタルタイの代わりにシルクのスカーフ、ペニーローファーの代わりにビットローファー。クラシックなアイテムをフレンチ的なアイテムに置き換えることで、プレッピーの骨格を残しつつ雰囲気を一新できる。


フレッピーのキーアイテム5選

セレクトショップに並ぶキーアイテム

1. ストライプシャツ

フレッピーの主役ともいえるのがストライプシャツである。プレッピーの定番であるボタンダウンのストライプシャツを、フレンチ的にオーバーサイズで着こなす。太めのストライプよりも、ペンシルストライプやロンドンストライプのような細めの柄が今季は好まれている。

着こなしのポイントは、袖のまくり方と襟の抜き方にある。袖は手首から拳一つ分まくり、襟は後ろ側だけをわずかに立てる。この二つの動作だけで、きちんとしたシャツにフレンチ的な抜け感が加わる。ボタンは上から2つ目まで開けるのが2026年の気分だ。

素材はウォッシュドコットンがベストである。新品のパリッとした質感ではなく、何度も洗いをかけたような柔らかい風合いがフレッピーらしさを引き出す。MAISON KITSUNÉの2026SSコレクションでは、リネン混のストライプシャツが象徴的なアイテムとして登場した。

合わせるボトムスはチノパンが王道だが、デニムとの組み合わせもフレッピーでは推奨される。ストレートシルエットのミディアムブルーデニムに、シャツの裾をフロントだけタックインする着方は、パリのストリートスナップでも頻出のスタイリングである。

Point:「ペンシルストライプ×ウォッシュドコットン」が今季の正解
太ストライプは避け、細めの柄で上品さを確保する。素材は柔らかく洗い込んだコットンで、フレンチ的なこなれ感を演出するのがフレッピー流である。

2. コットンニット

プレッピーの象徴であるVネックセーターやクルーネックニットは、フレッピーにおいても重要なレイヤードアイテムである。ただし、選ぶべきはウール100%ではなく、コットンニットだ。春夏シーズンに対応する軽やかさと、フレンチ的なリラックス感を両立できる。

AMI Parisの2026SSコレクションでは、肩を落としたドロップショルダーのコットンニットが多数登場した。従来のプレッピーニットより身幅に余裕があり、ストライプシャツの上から羽織っても窮屈にならない。袖口や裾からシャツをのぞかせるレイヤードが、フレッピーの定番テクニックである。

カラーはオフホワイト、ライトグレー、ペールブルーといった淡色が中心である。ニュアンスカラーのニットにストライプシャツを重ねることで、色の奥行きが生まれる。差し色として、ネイビーやバーガンディのニットを1枚持っておくとコーディネートの幅が広がる。

ニットの肩掛けもフレッピーでは積極的に活用したい。プレッピーの定番テクニックだが、フレンチ的にはあえて片肩だけにかけ、もう片方はずり落ちるままにしておく。完璧すぎない着崩しが、エフォートレスな印象を作り出す。

Point:ドロップショルダーのコットンニットがレイヤードの鍵
ウール素材ではなくコットン素材を選ぶことで、春夏の軽快さとフレンチ的な柔らかさを同時に手に入れられる。

3. チノパン

フレッピーのボトムスとして最も汎用性が高いのがチノパンである。プレッピーの正統派アイテムでありながら、シルエットの選び方次第でフレンチテイストに寄せられる柔軟性を持つ。フレッピーにおいて推奨されるのは、テーパードよりもセミワイドのシルエットだ。

カラーは定番のベージュに加え、オリーブ、セージグリーン、グレーベージュ(グレージュ)が2026年のトレンドである。フレンチ的なニュアンスカラーのチノパンは、トップスの選択肢を大幅に広げてくれる。素材はストレッチ入りのコットンツイルが動きやすく実用的である。

丈感はフルレングスではなく、くるぶしが見えるアンクル丈が推奨される。ローファーとの相性が抜群で、足元に軽快さが生まれる。裾をロールアップする場合は2回折りが基本だ。J.CREWの2026SSラインでは、アンクル丈のセミワイドチノがフレッピーの文脈で打ち出されている。

プレッピーではセンタープレス(折り目)を入れるのが一般的だが、フレッピーではプレスなしが主流である。洗いざらしのチノパンにローファーを合わせる。この「きちんとしたアイテムを力を抜いて着る」姿勢が、フレッピーの真髄を体現している。

Point:セミワイド×アンクル丈が2026年のチノパンの正解
センタープレスは入れず、洗いざらしのまま穿く。くるぶしを見せてローファーとつなげるのが、フレッピー流の足元の軽さである。

4. ローファー

フレッピーの足元を飾る最重要アイテムがローファーである。プレッピーの文脈ではペニーローファーが王道だが、フレッピーではビットローファーやホースビットローファーも選択肢に入る。イタリアやフランスのブランドが手がけるローファーは、プレッピー由来のアイテムにヨーロッパ的な洗練を加えてくれる。

カラーはブラウン系が最も使いやすい。キャメル、コニャック、ダークブラウンの3色があれば、フレッピーのほぼすべてのコーディネートに対応できる。ブラックのローファーはフォーマルに寄りすぎるため、フレッピーでは避けるのが賢明だ。

素材はスムースレザーが基本だが、スエード素材のローファーもフレッピーでは人気が高い。スエードの起毛した質感は、フレンチ的な柔らかい印象を足元に加えてくれる。春夏シーズンであれば、スエードのライトベージュやグレーのローファーが涼しげで好印象である。

素足で履くか、靴下を合わせるかはスタイリングの分かれ目になる。フレッピーでは素足履きが推奨される。アンクル丈のチノパンから素足をのぞかせ、ローファーにつなげるラインは、フレッピーの象徴的なシルエットといえる。

Point:ブラウン系のローファーを素足で履くのがフレッピーの定石
ペニーローファーだけでなくビットローファーも選択肢に入る。ブラックは避け、ブラウン系で足元に温かみと抜け感を出すのがポイントである。

5. 紺ブレザー

プレッピーの象徴中の象徴である紺ブレザーは、フレッピーにおいても不可欠なアウターである。ただし、従来の肩パッド入りの構築的なブレザーではなく、アンコン(アンコンストラクテッド)仕立てのリラックスしたブレザーが2026年の主流だ。

MAISON KITSUNÉやAMI Parisが提案する紺ブレザーは、肩パッドを排し、芯地を最小限に抑えたソフトな仕立てである。カーディガンのように軽やかに羽織れるのが特徴で、フレンチ的なエフォートレスさを体現している。メタルボタンではなく、マットなネイビーのボタンを採用するブランドも増えている。

フレッピーにおける紺ブレザーの着こなしは、タイドアップしないのが原則である。インナーにはストライプシャツかボーダーカットソーを合わせ、第一ボタンは開けたままにする。ポケットチーフも入れない。プレッピーの「正装感」をフレンチの「脱力感」でオフセットするのがフレッピーの美学だ。

サイズ選びは、通常の1サイズ上がおすすめである。肩が落ちるくらいのオーバーサイズで着ることで、堅苦しさが消え、カジュアルダウンされた印象になる。袖は8分丈に見えるようにまくると、手首周りに軽快さが加わり、フレッピーらしい着姿が完成する。

Point:アンコン仕立て×ワンサイズ上がフレッピー流紺ブレ
肩パッドなし、メタルボタンなし、ポケットチーフなし。引き算の発想で紺ブレザーをカーディガン感覚で羽織るのが2026年の正解である。

まとめ──フレッピーの始め方3ステップ

ショッピングでスタイルを始める

フレッピーは、高価なアイテムを一度に揃える必要はない。手持ちのワードローブを活かしながら、以下の3ステップで段階的に取り入れるのが現実的である。

ステップやること必要なアイテム予算目安
Step 1手持ちのシャツをフレッピー的に着崩すストライプシャツ(手持ちでOK)0円
Step 2足元をローファーに変えるブラウン系ローファー1足15,000〜40,000円
Step 3アンコン紺ブレを投入するアンコン仕立ての紺ブレザー20,000〜60,000円

Step 1:手持ちのシャツを「崩して」着る

まずは新しいアイテムを買わずに、手持ちのシャツの着方を変えることから始める。ボタンダウンシャツやドレスシャツがあれば十分だ。袖をまくり、襟の後ろを立て、ボタンを2つ開ける。裾はフロントだけタックインする。

この「着崩し」だけで、いつものビジネスカジュアルがフレッピー的な雰囲気に近づく。もしストライプシャツを持っていなければ、ユニクロやZARAで2,000〜3,000円で手に入る。最初の一歩としてはこれで十分である。

重要なのは「やりすぎない」ことだ。崩しは1〜2か所に留め、残りはきちんと着る。全部を崩すとだらしなく見えるだけである。フレンチスタイルの鉄則「引き算の美学」を意識してほしい。

Step 2:足元をローファーに切り替える

次のステップは、スニーカーやドレスシューズからローファーへの切り替えである。ローファーは一足持つだけでコーディネート全体の印象を劇的に変える。ブラウン系のペニーローファーかビットローファーを選べば、オンオフ問わず活躍する。

予算を抑えたい場合は、HARUTA(約10,000円)やG.H.BASS(約15,000円)が手頃でクオリティも高い。投資できるなら、J.M.WESTON(約120,000円)やPARABOOT(約70,000円)のローファーは一生モノの価値がある。

素足で履く場合は、フットカバー(見えない靴下)を使うと靴の内側を清潔に保てる。春夏シーズンはスエード素材のローファーも選択肢に入れてみてほしい。ライトベージュのスエードローファーは、フレッピーの軽快さを足元から演出してくれる。

Step 3:アンコン紺ブレで完成させる

最後の仕上げがアンコン仕立ての紺ブレザーである。これを手に入れれば、ストライプシャツ+チノパン+ローファーの基本コーディネートに羽織るだけで、フレッピースタイルが完成する。肩パッドのないソフトな仕立てのものを選ぶのが鉄則だ。

手頃な価格帯では、BEAMS(約30,000円)やUNITED ARROWS(約40,000円)のオリジナルラインにアンコンブレザーがある。より本格的なものを求めるなら、BOGLIOLI(約80,000円)やL.B.M.1911(約60,000円)がイタリアンテーラリングの技術を堪能できる。

サイズは通常より1サイズ上を選ぶ。鏡の前で肩のラインが指1本分落ちるくらいがフレッピーの適正サイズである。袖は8分丈にまくり、手首を見せる。これだけで「きちんと見えるのに堅くない」というフレッピーの核心が表現できる。

フレッピーは、フレンチの引き算とプレッピーの様式美が交差する2026年ならではのスタイルである。手持ちのワードローブと少しの意識改革で、誰でも今日から始められる。まずはシャツの着方を変えることから、試してみてはいかがだろうか。